年収や安定性より自分が成長できるかが入社の決め手――。
就職情報大手のリクルートキャリアが31日に発表した調査で、今春就職予定の学生のこんな意識が明らかになった。
国際的な企業間競争の激化などもあり、「新卒で入っても一生安泰ではない」という学生が多く、自らの成長こそが将来の安定につながると考える学生が増えていることがうかがえる。
2019年卒業予定の大学4年生らを対象に18年12月にインターネットで調査。
民間企業への就職が確定している978人の回答を集計した。
就職先を確定する際に決め手となった項目を複数回答で聞いた。
全体では「自らの成長が期待できる」が47.1%で最も多く、「福利厚生や手当が充実している」(37.8%)、「希望する地域で働ける」(37.0%)が続いた。
一方、「会社や業界の安定性がある」は29.5%、「年収が高い」は18.4%にとどまった。
学生からは「セカンドキャリアを考えれば会社の良しあしではなく自分の成長が最も大事」という声があった。
男子学生と女子学生では回答に差がでる項目もあった。
決め手の1位は男子が自らの成長なのに対して、女子は「希望する地域で働ける」だった。
慣れない土地での勤務や全国転勤を敬遠し、勤務地の選べる点を決め手に挙げた女子学生も多かった。
さらに、「会社・団体で働く人が自分に合っている」という回答や、「(フレックス制度や在宅勤務、育児休暇など)働き方が充実している」は女性の方が高い。「年収が高い」は男子は23.0%と女子より10ポイント高くなっている。
成長とストレスのどちらを優先するかという設問では「短期で成長できるが、体力的・精神的なストレスもかかる」という回答は32.2%にとどまり、「短期では成長しにくいが、体力的・精神的なストレスがかからない」が67.8%に達した。成長志向を掲げながらもストレスを避けたいという思いもうかがえる。
リクルートキャリア・就職みらい研究所の増本全所長は「グローバル化やテクノロジーの進化による競争激化で企業寿命が短くなる一方、人生100年時代で職業寿命は延びている」と強調。学生には安定志向も根強いが、「将来が見通しづらい社会では自らの成長こそが安定につながる」と考える学生が多くなっていると指摘している。
「日本経済新聞」2019年1月3日より
