2019年4月、約70年ぶりに労働基準法が改正され施行される。
5月には新年号が制定され、新たなステージの幕開けが近い。
豊富な労働力と安い賃金で支えられ爆発的な発展を遂げた昭和・平成から、少ない労働力でより質の高い仕事で価値を上げることが国際社会においても求められる新たな時代に突入していくことが予想されている。こうした時代の流れは当然、中小企業にも訪れる。この変化を、「我関せず」と見逃したままいくのか、それとも5年後を見据えて今から取り組むのか。両者の差が大きく開くのは自明だ。
とはいえ、中小企業は不安だらけだ。例えば、担当者がいない、費用をかけられない、そもそも忙しすぎてそんなことに回せる時間はない…しかし、逃げてしまったら取り残されるばかり。今、変革するしかない。
社会全体の後押しがある今だからこそ、一気に変革できる、ともいえる。
働き方改革の4つの基本ステップ
働き方改革を進めるには、4つの基本ステップがある。
①現状を把握する(朝メール・夜メールの実施)
朝メールには、一日の作業を15〜30分単位で書き出し、「本日の優先順位」「特記すべきコメント」を付け加えておく。このメールを、上司を含むチーム全員に発信し、共有する。夜メールは、終業後に当日の業務を振り返り、「時間見積もりと実際にかかった時間の差異」「時間の使い方のよかった点と反省点」などを朝メールに追記して、全員に共有する。
これらを共有すると、他メンバーが、どこで何をしているのかが分かるようになるだけでなく、緊急事態、突発事故などに対する対処法を、チーム全体のノウハウとして共有できるほか、他メンバーのメールに対し、応援や共感のメッセージを送ることで、チーム内のコミュニケーションが増加し、助け合って仕事をする空気が生まれる。
②課題抽出(朝メール・夜メールの振り返り)
「メンバー1人1人が、自分の「働き方」を“見える化”して、改善すべきポイントを把握すること」・「チーム全体の「働き方を集計・分析」して「チームの課題を明確にし、具体的な解決策をディスカッションできるようにすること」。一定期間にわたって、全メンバーが記録したメールを集計・分析すると、「どの仕事に、どれくらい時間をとられているか」が一目瞭然になる。
③カエル会議(要因分析)
「働き方をカエル(変える)」・「早くカエル(帰る)」・「人生をカエル(変える)」という意味を込めた大事な会議のこと
④解決策の実施(アクションシートでの進捗管理)
【スキルマップ】
まず、業務を実施するのに必要なスキルをすべて洗い出す。少ない企業でも20はくだらないはずだ。次に、スキルの習熟度を◎〇△×などで“見える化”する。
【会議資料の枚数制限】
会議が長い、資料の準備時間が膨大といった課題を抱える組織は、会議資料の枚数に上限を設定してみよう。会議が長くなる背景には、資料が膨大すぎて読み込むのに時間がかかったり、要点がぼやけてしまい判断ができなかったり、といったことがある。たとえば資料は10枚以内といったルールを設けることで、資料を読む側も作る側も取捨選択しやすくなる。
【集中タイムの設定】
1回30分程度、集中して作業する時間を1日に確保、周りからも「集中タイム中」であることがわかるように、プラカードなどの表示を出しておく。集中タイム中は、会議を入れない、電話の取次ぎをしないでもらうなどのルールも合わせて整理しておく。こうすることで、集中して作業ができミスも減る。
④まで進んだらまた①に戻り、振り返りを繰り返していく。
実行し、修正してこそ意味がある
こうした解決策は、考えだしただけでは意味がない。きちんと実行し、うまくいかない部分は修正を重ねていく必要がある。そのためには、毎週のアクションをまとめた「アクションシート」を作成し、進捗が見える状態を作ることも大切だ。
働き方改革は一朝一夕にはできない。その過程で意見の対立もあるだろう。慣れ親しんだ従来型の働き方を変えることに不安を抱く人も多いだろう。しかし、長時間労働を脱し、誰もが自分に合った働き方ができる環境をつくることは、日本社会全体がさらに前進するための大きな挑戦だ。焦らず、諦めず、一歩ずつ進めていこう。
現代ビジネスより