働き方改革に? “スエットワーキング”とは

ひと昔前までパワーランチ、パワーブレックファスト、ステーキ&ワインが定番だったアメリカで広がっています。スエットとは、“汗”のこと。それに人脈を築くための“ネットワーキング”を組み合わせたのが、スエットワーキングです。
でも、どれだけ仕事で汗をかくの?

アドビから学ぶ スエットワーキングとは

ロサンゼルスのビジネスマンが集まる国際会議などを訪れると、最近は早朝からサイクリングやヨガといったプログラムが用意されていることが増えています。

PDFで知られる、大手ソフトウエア会社アドビ(本社カリフォルニア州サンノゼ)主催のマーケティングに関する会議の初日に、サイクリングのイベントが設定されました。

この会議は、アドビのクライアントで、ITやマーケティングを担当する会社の幹部など約2万人弱の人達が各国から集まる大規模なもの。ラスベガスが会場です。

周囲は砂漠で、朝夕は冷え込み、早朝6時からのサイクリングに予定通り20人が集合。

予め身長などを伝えており、アドビより事前に用意した体にぴったりのロードバイクやヘルメット、手袋を次々と配られます。

まだ冷たいラスベガスの空気の中をこぎ進みながら、2列で走れるバイクレーンでは会話もでき、1時間ほど走った後は、コーヒーを飲みつつ、仕事の話を続けます。

この一連の流れが「スエットワーキング」です。

れっきとしたビジネス

途中の休憩で、アドビの担当者が自転車にまたがったまま、「お客さまと一緒に汗を流すこうした体験を通じて、生の声を聞きたい。ぜひ前向きなアイデアや、複雑な問題の解決策を出し合う場にしましょう」とあいさつ。

これがまぎれもなくビジネスだ、ということを認識。

ひと汗かいたあと、日本の自動車メーカーに勤めるアメリカ人女性に感想を尋ねると「1杯飲むよりはるかに有意義ね」と答えてくれました。

カナダのIT企業の男性も「役員室ではなく、自転車の上で他社の役員とビジネスについて話せた。それもリラックスして」と前向きな評価でした。

アドビには専門部署まであります

アドビは、顧客を対象にするこうしたイベントを「体験型マーケティング」と呼んで、専用の部署も設けています。

統括するベン・ラブナーさんは「企業の幹部は取引先と運動する『スエットワーキング』に軸足を移しています。脳が活性化されることもあり、カクテルやステーキといった接待より、早朝から健康的に自転車に乗ろう、という流れが確実に起きています」と解説してくれました。

アドビは今回のようなサイクリングのイベントを、今年27回計画しています。去年の36回より少ないですが、その分、ヨガとハイキングを増やすということです。

ビジネスの効果は

スエットワーキングがもはやビジネスに欠かせなくなっていると成果を実感している人は、
「自転車の上では誰もが平等です。会社や社会でステータスが高い人が、スエットワーキングでも上位とは限りません。それに、拘束時間が長いゴルフと違って、2時間で効率がよいのです」とのこと。
なるほど。

フィットネスに商談スペースも

室内で行うヨガや、音楽に合わせてペダルをこぎ続けるインドアサイクリングをビジネスに活用する動きも広がっています。

ニューヨークには、インドアサイクリングの専門スタジオと提携して、午前5時からクライアントを招く大手金融機関もあります。

スタジオ側も、希望があればクライアントと隣どうしの自転車を確保したり、商談スペースを設けたりしているところもあり、スエットワーキングは浸透しています。

改めて、スエットワーキングのよさとは

冒頭のアドビのサイクリングのイベントには、日本からも企業の幹部が参加していました。
「初めて会った人ともけっこう気軽に話ができて、楽しかったです。日本でも広がればよいのに」と話していました。
同感です。
働き方改革のため、健康的な肝臓を維持するため、あるいは外国の取引先を迎える新しい試みのため…。理由はともかく、スエットワーキングを日本でも取り入れる企業が増え、就職する際でも役に立てればいいですね!
参考サイト:NHK NEWS WEB